フランスの高級ブランド、エルメスの創業者一族の一員であるニコラ・ピュエシュ氏(81)は、自身の遺産を庭師に相続させる計画を明かし、メディアを驚かせました。しかし、その巨額の資産の行方がわからなくなっており、世界中の注目を集めています。
謎に包まれた資産の消失
ピュエシュ氏が所有していたとされる資産の消失は、長らく謎に包まれていました。同氏は元財務アドバイザー(FA)であるエリック・フライモン氏を訴えましたが、スイスの裁判所は証拠不十分として訴えを退けました。焦点となっているのは、エルメス・インターナショナルの株式約600万株であり、その価値は約120億ユーロ(約2兆円)にも上ります。
エルメス一族の背景
1837年に創業されたエルメスは、「バーキン」バッグやカラフルなスカーフで知られています。一族は欧州で最も裕福な家系の一つであり、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、その純資産は約1550億ドル(約23兆9600億円)とされています。
法廷での決定とその影響
ジュネーブの控訴裁判所は、フライモン氏に対する訴えを退け、ピュエシュ氏が資産管理を彼に任せていたことを認めました。同氏は多数の白紙委任状に署名し、銀行口座へのアクセスを許可していましたが、常に自分の行動を理解していたとされます。この決定により、ピュエシュ氏がだまされていたという証拠は見つからず、彼がフライモン氏を「盲信」したことが問題の核心ではないと結論付けられました。
背景にあるLVMHとの対立
この混乱の背景には、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのCEO、ベルナール・アルノー氏によるエルメス株買収の試みがあります。アルノー氏はエルメス株を23%まで増やした後、段階的に手放しましたが、この過程でピュエシュ氏は一族から疎まれるようになりました。彼の行動がエルメスとLVMHの間に亀裂を生じさせ、ピュエシュ氏のエルメス株には消えない傷を残しました。
今後の展望
今回の裁判所の判断は、ピュエシュ氏の資産の行方を明らかにするものではありませんでしたが、彼の資産管理のあり方に疑問を投げかけるものです。一族の一員としての影響力を失い、今後どのように自身の財産を管理していくのかが注目されています。また、この事件が他の高級ブランドにも影響を与える可能性があるため、今後の動向に注視する必要があります。
エルメスのような世界的ブランドの裏側には、複雑な家族関係やビジネス上の駆け引きが隠れていることが今回の事件で浮き彫りになりました。資産の行方が再び明らかになる日が来るのか、それともこのまま闇に葬られるのか、注目されます。